花嫁と咎人

鉄格子越しの彼女の表情。

その隙間から手を伸ばして…俺はそっとその白い頬に触れた。


「…ああ、俺は、そう…咎人。」


涙が出るのを堪える余りに、途切れ途切れになる言葉を必死に紡いで…


「たった一人の大切な人を、愛しすぎてしまった。」


下がる眉。

そんな俺の表情をフランは見つめる。


「罪か…?」


溢れたのは想いと涙。


「…想う事は、大罪か?」


フランの頬から手を離せば、力なく冷たい床に落ちる手。


「出会わなければ…こんな事にはならなかったのか…?」


情けないと思っても、感情を塞き止めていた堤防は決壊してしまった。

自分の境遇も、彼女の境遇も…今起こっている何もかもを否定して。


恨む対象も分からずにただ手の平を握り締めた。


記憶は第二の心臓だ。
見えぬ、命だ。

フランが生きていた事はこの上なく嬉しかった。

けれど、思い出は…死んでしまったのだ。

ポタリ、ポタリと、床に作られていく涙の池。


近いのに遠すぎるその距離を、俺にはどうする事もできなかった。
喪失感を紛らわせてくれるものなど、何一つ無かった。


だが、その時。

鉄格子の向こうから…手が伸びてきて。

そしてその手は俺の頬を触ると、優しく涙を拭った。


「―――…、」


驚いて顔を上げると…、



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