花嫁と咎人


だから…戻ってきてくれ。

何処にも行かないでくれ。


あの牢で出会った事も、

変装して街まで逃げた事も、

沢山の人と出会い、別れ、

共に過ごした日々を…




どうか、偽りにしないで。



それに―…



「俺は、君に嘘を付いた。物凄く…大きな嘘を。」


そう。

それさえも白状できないのは、嫌だ。

だが、


「―…って、こんな事言っても…今のフランには分かんないよな…。」


自嘲気味に笑ってフランから手を離したその時、


コツン、コツン。


と洞窟の奥から靴の底がなる音がした。

その足音はどんどんこちらに近づいてきて…


「………。」


足音の主の姿を現した。

それは真っ黒な貴族服を纏った黒髪で金色の瞳の青年、
と、王国騎士団の制服を纏った男。


「………!?」


そしてその傍らには白衣を着た、アキの姿があって。


「―…テメェ、あの時の…!」


地下牢に入れられた時の映像を思い出しながら、俺は瞬時に立ち上がると鉄格子を強く握り締めた。



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