花嫁と咎人
「ま、待って下さい、この方は、」
アキが俺に何かを伝えに来たが、
「どけ!部外者は引っ込んでろ!」
殺気立った自分の耳にはもう何も入ってこなくて。
だが、黒髪の彼はその様子に動じる事無く…
俺とフランを交互に見て小さく息を吐いた。
そして鉄格子越しに俺を見ると、
「…僕はオーウェン・イブ・シュヴァンネンベルクと申します。」
淡々とそう言う。
「だから何だってんだ…!アンタの名前なんかに興味なんてねぇよ!」
でもあの時の恨みを俺は抑えきれずにいた。
助けるどころか、地下牢にぶち込まれた事。
何を隠そう、そうやって命令を下したのはこのクソ野郎で。
キャンベル姉弟の家をハチャメチャに壊滅させたのもこいつ。
挙句にフランを刺したのも部下の王国騎士団。
勿論俺達を追っていたのも紛れも無くこのオーウェンとかいう奴だった。
フランから話は聞いている。
こいつの父親のせいでフランは地下牢へ幽閉され、その息子のせいで俺は死刑囚の肩書きを背負わされた。
恨む相手は違うとも、
「…親が親なら子も子だな…!」
恨みの原点は変わらない。
「勝手に俺達を牢にぶち込んで、罪人扱いしては追い回して…!俺が何かしたか!ただ漂着しただけなのに、死刑だって!?」
だが、どれだけ叫び、罵っても…彼は微動だにせず、
ただ俺の目を見るばかりで。
「貴族サマのお遊びも大概にしやがれ!俺達は人形じゃねぇんだ!れっきとした人間なんだよ…!」
俺の怒りは治まるどころかみるみる激化していく。