花嫁と咎人

「フランもこんな事に…ッ!…全部、全部!アンタ等のせい、」


しかしその時。


「…僕は、貴方の事を知っています。」


オーウェンが静かに口を開いた。


「…は、?」


思わず俺は彼を凝視してしまって。
先程の尋常じゃない怒りが吐き出せずに…息が詰まりそうになる。

一体こいつは何を言ってるんだ?

俺の事を知っている…?


「僕は貴方の正体を知った上で…城に連行した。」


彼のその言葉を聞いたその刹那、俺は笑い出した。


「…、何だよ…じゃあ、俺が何者か知りながら死刑囚にしたって言うのか。」


そして再びこみ上げてくる怒り。
笑みが消え、眉間にしわが寄る。


「…ふざけんじゃねぇよ、」


もしあの時、城に連行されなかったら…


「ふざけんじゃねぇよ…!」


もっと早く母さんを見つけ出して、姉さんを救う事が出来たのに…!

俺は鉄格子の隙間から手を伸ばし、彼の服の襟を思い切り掴むと同時に…
彼の腰にぶら下がった剣を左手で引き抜いて、その刀身を首筋に押し付けた。


「―、っ!」


それを見て部下らしき王国騎士団の男が己の剣の柄に手をかける。

…だが微動だにしないオーウェンの後ろ姿で何かを悟ったのか、そのままの体勢で動きを止めた。


怒りに震える俺の手。
オーウェンの首の皮膚が切れて、その銀の刀身が少しだけ血に濡れた時、


「…貴方なら、姫様を…この国を救って下さると信じていた。」


真っ直ぐな瞳で…彼は俺を見て。





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