花嫁と咎人
「…?大きな、鷲、ですか?」
意味が分からないと言わんばかりの表情をするオーウェンだったが、分かりましたと言って小さく頭を下げる。
だが、俺は再びそんな彼の背中に向かって言付けをした。
「あとさ、」
「…何ですか。」
「その妙な香水付けるのやめろ。」
そして目線を横に向ければ鉄格子に持たれかかって眠るフランとアキの姿が。
俺が怒鳴り散らかしている間にはもう、ヨロヨロとフラつきだしてこの状態だった。
そんな二人を見て、ああ…と顔を歪めると、
「…そうですね。」
彼は苦笑いをして歩み去っていった。
―…二人の寝息だけが聞こえる中、俺は静かに目を閉じる。
明日で国を出てから丁度5年目。
…忌々しい約束の日。
「間に合ってくれよ、オズ。」
呟いた声が消える前に「はぁ」と息を漏らした。
そして冷たい床に寝転がりながら…手枷をいじる。
嗚呼、最高の前日だ。
なんて皮肉に思いながら、
俺は小さく口を開いた。
「ハッピーバースデー。…俺。」