花嫁と咎人
「…絶対頭おかしいよ、申し訳ないけどやっぱりおかしい。」
半分泣きべそをかきながら、今見つかったら殺されちゃうよ…とアキは呟く。
…とは言っても、ここには見張りがいない。
たまに賊員が見に来るけれど、すぐに帰っていってしまう始末。
どうやら既に報酬は受け取っているようだし、引き渡す相手もすぐ側にいる。
つまり俺達が何をしようとここの賊頭は困らないって話。
困るのはあっち。
シュヴァンネンベルク公ラザレス。
王族の証を持っているのは…フランだから。
――そして数時間後。
「…やっと終わった…。」
アキの疲れきった声と共に出来上がったのは…数十本の爆薬。
と、それを何処に配置するかの設計図。
アキはその爆薬をその設置図通りに洞窟の彼方此方に設置すると…
「―もう無理、寝る。」
そう言って洞窟の奥の方へと行ってしまった。
残されたのは、俺とフランの二人だけ。
フランは俺をじっと見つめて…俺もそんな彼女を見つめる。
そして暫くその状況が続いた時…
俺は小さく微笑むと、こう言った。
「…なぁフラン。アンタ…ここから出るつもりはないか。」
その言葉に首を傾げるフラン。
「その気があんなら出られるぜ。…最も…出る気があるならの話だけどな。」
「…どういう、つもり?」
あの時とは少し状況は違う。
でも、俺達は変わらない。
不思議な表情をして口を開くフラン。
そんな彼女に見える様に、俺は大きく両手を上げた。