花嫁と咎人
誰かがこちらに駆けて来る音がして…
「…あの!」
現れたのはオーウェン。
走ってきたのか、膝に手をつき…呼吸を正しながら…
「―…、大きな、鷲が、」
途切れ途切れにそう告げて。
鷲。
やっと来たか。
「それと、どうやら僕の父が貴方を追って、既に“ブランタン”まできている様なんです。」
それから彼はガチャガチャと牢の鍵を開け、
「報酬は払いました。貴方はもう、自由だ。」
格子を放った。
「この国の事は気にしないで下さい。」
自分を捕らえた時、追っている時。
「責任は、シュヴァンネンベルク公爵家にあります。」
その時とはまるで別人のようにオーウェンの金色の瞳は煌いて。
誰よりも人らしい表情を見せつけては、必死に言うのだ。
「…逃げて下さい。貴方はこんな所で終わってしまってはいけない。」
ああ、ずるいじゃないか。
「あと…女王陛下も、宜しくお願いします。」
一人だけ、
「良かったら後で…今までのご無礼をお許し下さいと、伝えて下さいますか。」
カッコつけやがって。