花嫁と咎人
◆ ◇ ◆
―…フィレンツィリア王国。
港、ポルトデルニエ。
「全軍、乗船ー!」
大きな声と共に動き出したのは、フィレンツィリアの紋章を纏いし大勢の軍隊員。
港に浮かぶ4隻の船が警笛を鳴らし、もくもくと黒煙を空に放った。
「一号艦出港ー!」
そして暫くした後、合図と共に港を離れる船。
港からは国旗を振った沢山の国民が見守っている。
「―――…。」
甲板の上に立つルエラは、その姿をじっと見ていた。
「…心配ですか。」
そしてその隣には、オズの姿が。
彼の言葉にルエラは微笑むと、
「…ああ、少し。」
再び海へと視線を戻す。
「大丈夫ですよ、アイツなら。案外死にません。」
「だと良いが。」
―…隠せない不安。
それでも、こうする他は無くて。
「誰かがやらなければならない事だ。勿論ハインツの為ではあるが、」
眉をひそめたまま、
「同時にあの国の為でもある。」
ルエラは言う。