花嫁と咎人

「…いつまでも時を止められるほど、人は尊大ではない。」


潮風がそっと頬に触れて、


「私の父がそうしようとした。…けれど時は、それを許さなかった。」


靡く銀髪。

オズもまた海を眺め、小さく息を吐いた。


「ハインツに似てますね。」


「……。」


「―…その理屈っぽい所。」


ルエラが見つめる中、オズは小さく微笑んで。


「でも、嫌いじゃない。」


ルエラを見つめれば「口が過ぎるな。」と笑う彼女。


「捕まえないで下さいね。」


「さあ?悪党を放って置くほど、私の心は広くないぞ。」


「…もう、冗談。」


そして暫くの沈黙の後。


「…まあ、それは、いずれハインツが決める事さ。」


ルエラは静かにそう告げた。


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