花嫁と咎人
女王と死刑囚
―…馬は、駆け抜けた。
木々の間を抜け、失踪するその姿は…まさに疾風のごとく。
白いドレスを靡かせその腕に抱く女王は、好奇心からか前だけを向き、
「…すてき。」
そう呟いて。
自分はそんな彼女に微笑みながらも、鋭い眼光で前を見た。
「…みんな、しんでしまったの?」
するとフランは急に俺の方を心配そうに見つめてくる。
どうやら先程の爆発のせいでと思っているらしい。
そんなフランを俺は見つめ、
「死んでないよ。…あの程度じゃ落盤もしないから。」
心配はいらないと告げれば、
「…よかった。」
まるで咲き誇る花のような笑顔。
嗚呼、彼女だけでも。
せめてフランだけでもこの呪縛から解いてあげなければ。
想いを胸に、俺は馬を走らせる。
だがその心中は複雑だった。
何かを変えようとするならば、それなりの犠牲が伴う。
今、俺がやろうとして居る事。
出来るかできないかの瀬戸際の挑戦。
もしかしたらもう…
「…二度と会えないかもしれない。」