花嫁と咎人
小さく呟いた声は誰にも届かずに、無と化す。
でも。
それでも…構わないと、心に決めたのだ。
ある意味残酷で、ある意味幸福なこの選択。
でも、後悔はしていない。
彼女が俺の全てなのだ。
もう…これ以上の想いを募らせる事は無いだろう。
故に命を賭けて守る価値がある。
俺は馬を走らせ続けた。
何時間も、何時間も。
彼女の為ならなんだって出来た。
そして―…
「わあ。」
海が見えた。
森を抜ければそこは岸壁。
一面に咲き誇る、黄色い花。
馬を降り、中心へと向かう彼女の姿を…俺はじっと見ていた。
フランが回る度に、舞い踊る黄色い花。
その中でも彼女の着ている白いドレスはとても良く映えて。
「…本当に綺麗だ。」
だが、心なしにとても儚げに微笑んでしまった。
胸が苦しくて、痛くて…
それでも前を歩かなければいけない事が、苦痛で仕方が無かった。
するとその時、大きな鷲が舞い降りてきて。
服の袖を伸ばしその鷲を腕に止まらせる。
「大変だっただろ。ここまで来るのは。」
そう言って小さな頭を撫でれば、気持ち良さそうに目を閉じる鷲。
そして俺は彼の足に着いていた紙を取ると…目を走らせた。