花嫁と咎人
達筆な文字で書かれた文章。
文の終わりには“ルエラ”と記されていて。
「…姉さん。」
安堵の溜め息と共に…俺はその手紙を握り締める。
それから自分の懐から紙を取り出し、
「北だ。…お前が、姉さん達を案内してやれ。」
細い足に括り付け着けると、
「Gehen」
俺は鷲を放った。
…長い尾を揺らめかせて空へと飛んでいく鷲を幾分か見つめた後、
「……。」
再び俺はフランに目を戻す。
「――…♪」
黄色い花畑の中…
歌を歌いながら花冠を作る彼女は、まさに女王に似つかわしい姿で。
一歩ずつかみ締めるように地を踏み…
俺はフランに近づいた。
そしてその目の前に座り、優しく頬を撫でる。
「―…なぁフラン、」
口を開けば、俺を見つめるエメラルドの瞳。
「アンタは、俺をどう思ってる。」
段々と澄んでくるその瞳を見て―無性に泣きたくなった。
…勿論彼女からの返事は無い。
記憶の無い彼女には意味の無い事だと分かっていた。
でも、
それでも、知りたかった。