花嫁と咎人
それなのに彼は「女王はどうした」というラザレスの質問に対して、
「…殺した。んで、海に捨てた。」
さらに自分を追い込むような事ばかりを言う。
そしてトドメには、
「アンタが欲しいのは、これだろ。」
唯一の切り札である“王族の証”までをも差し出してしまって。
「な、んて馬鹿な事を…!」
オーウェンはただ頭を抱えるばかりだった。
…女王を殺したなどと嘘ばかりを言い、
挙句の果てには何もかもを差し出すなんて。
この人は父がどういう人か知らないのか…?
そんな彼の想いとは裏腹に、とうとうハインツの手から“王族の証”を受け取ったラザレスは、
「…随分と潔の良い罪人だ。」
満足げに笑みを浮かべ、「こいつを連行しろ」とオーウェンに告げる。
「―…はい、父上。」
予想外の展開にどうする事もできぬオーウェンは、
ただ父の命に従い、無言でハインツの体に罪人のローブを着せ…
重たい手枷をつけた。