花嫁と咎人

例え離れても



『―さようなら。』



凍りついた景色の中で、
あなたの残像だけが揺らめいた。


「……。」


なぜだろう。

なぜなんだろう。


こんなにも…胸が痛むのはどうして?



鼻の奥がツンとして、ぼやけてくる視界。



辺りの黄色い花がざわついて、潮風が漂って…



――ポタリ。



涙が零れ落ちた時。





走馬灯のように記憶を駆け巡ったのはあなたの姿。



牢の中で出会ったあなた。

私を救い出してくれたあなた。


どんな時も側にいて、弱い私を支えてくれた…。



「―……ハ、」



大切な人。



「―…ネ」



世界でたった一人の



「…イ、ネ、」




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