花嫁と咎人
「…あなたを愛してる、」
嗚呼、これ程までに。
「好きなのよ、ハイネ…」
これ程までにあなたを愛してしまった事は罪だと言うの…?
手を開けば、そこにあるのは彼のピアス。
「あなたがいない世界で自由に生きられるほど…私は強くないの、」
訴えても…返事は返って来なくて。
「知っているでしょう…?」
溢れる涙は、白いドレスに染みを作るばかり。
これからどうしていいのかも分からず…
私はただ、暗くなる空を見上げた。
―だが、そんな時。
ふと、とある場面を思い出した。
それはアジトから脱出する間際、ハイネがオーウェンに話していた事。
『…大人しく死刑囚に戻ってやるって言ってんだよ。』
『最後には死刑台に行ってやるよ、だから、ぜいぜい最後まで俺を追いかけろ。』
『女王殺して捕まってやるから、テメェのクソ親父連れてきな。坊ちゃん。』
「まさか、」
ハイネは私を庇って―…!
刹那、私は後ろを振り返った。
そこにあるのは森。
「…っ、」
気がついたら、私はその森めがけて走り出していた。