花嫁と咎人
泣きそうな顔で目を開ければ、
「っ、!」
目の前には蛇の顔があって。
私は痛む体を引きずるようにして、後ずさった。
周りを見渡してみても、蛇、蛇、蛇ばかり。
いつの間にか私は蛇に囲まれていた。
「…そんな、」
木の上に逃げようにも体が痛んで動かないし、もしかしたら木の上にだっているかもしれない。
…嗚呼、どうしよう。
生憎丸腰で、何も持っていなかった。
剣を借りて置けば良かった?
だが、もう既に遅い。
蛇は腹が減っているのか、今にも飛びつきそうな勢いで私を睨み、舌を出す。
嗚呼、正に蛇に睨まれた蛙そのもの。
背中に木の幹が当たった時、もう駄目だと思った。
が、
「きゃあ!?」
突然何かが私の前を駆けたと思った瞬間、物凄い勢いで腕を掴まれたのだ。
そして「痛い」と言う暇さえ与えてくれぬまま…その人物は私を走らせて、
「何やってんだよ馬鹿!」
そう叫びながら先で待機していた馬の背中に私を放り投げる。
それからその人物も素早く馬に乗り込むと、
「やあっ!」
馬を走らせた。