花嫁と咎人
戸惑うオーウェンは、ただ首を傾げ…俺はただ笑みを零すばかり。
しかし、裏門を開けるという行為こそが。
「…ああ。だが…裏門を開けたその瞬間、アンタは何もかも失う事になる。」
オーウェンの敗北を意味していた。
「その地位も、」
黙るオーウェン。
「その名誉も、」
俺は静かに呟いて、青い目を彼に向けた。
「積み上げてきた全ては藻屑と化す。」
嗚呼、どちらにしても止められぬ運命。
俺の選択も、彼の選択も…もう、変えられない所まで来てしまった。
どうやらその意味をオーウェンは理解したらしい。
小さく声を漏らし、一度だけ目を伏せると…
「それしかもう、方法が無いのですね。」
金色の瞳は俺を見据えて。
「…構いません。それで、全てが終わるなら。」
揺らぐ事のないそれは、全てを覚悟したようだった。
刹那俺はオーウェンから目を離すと、周りの憲兵達に目を向ける。
そして、何処までも響くような声で大きく叫んだ。
「考えろ!今、お前達が何をすべきか!嘲笑う悪に忠誠を誓うか、それとも悪に立ち向かう正義に忠誠を誓うか!」
突然の出来事に怯える憲兵達。
だが、いつまでもそうやってたじろいでいられるほど…時は甘くない。
「…全ては残酷なほどに盲目だ。」
さあ、決断を。
「運命さえ、敵ならば。」
偽りを偽りとして認める時が、やっと来たのだ。