花嫁と咎人
涙を無理やり拭い、握り締めた新聞紙を広げて…
私は再びそこに目を落とす。
“死刑囚、自首か?”
“昨夜、自ら現れた死刑囚を捕えたとラザレス様から報告があった。
どうやら死刑囚は女王陛下の装飾品が目当てだったようだ。
彼は女王陛下を誘拐後殺害、遺体は海に投げ捨てたと供述している。
ラザレス様は今晩中にも王国騎士団を派遣して捜索を進める方針だが、遺体発見は極めて困難であるとの事。
若き女王陛下にはまだ跡継ぎがおらず、時期国王はまだ未定。
もしも女王陛下がお亡くなりになられていた場合、最有力候補はラザレス様であると貴族達は言っている。
尚、死刑囚は明後日の午後三時。
エステリア城前広場で処刑される事が決まった。”
「…こんなの、嘘ばっかりだわ…!」
私は広げた新聞紙をびりびりと破いた。
ラザレスはそこまでして王座が欲しいのか。
そう思えば思うほど、悲しみと共に怒りが込み上げてきて…
浮かんでくるのは死んでいった家族達。
「…お父様、お母様…。サミュエル…。」
皆、彼に奪われた。
そして今度は愛する人までも命の灯火を消されようとしている。
「…うう…。」
嫌だ。
そんなの嫌だ。
立ち上がり、涙を拭いながら歩きだせば…