花嫁と咎人
そう、そこに入っていたのは美しい装飾を施された綺麗なドレス。
緑と黒のリボンがふんだんに使われていて、可愛らしくも大人びたものだった。
私は思わずそれを持ち上げる。
と、その時。
また先程のカードの様な物がパラリと落ちて。
拾って視線を落とせば…アルベルタさんの若い頃がそこにあった。
そして着ている服は、まさに…このドレス。
私はそのドレスと本の様な物をより一層強く抱きしめ、口を開く。
「待っていてハイネ。」
―…彼に届けなければ。
母のこの思いを。
これは、あなたの思い出よ。
私の愛しい人。
大切な人。
あなたはこんな所で終わるべきではない。
さぁ、あの時のように…私の手を握り返して頂戴。
そして、私を連れ出して。
あなたと出会い
あなたを知った
そう、あの瞬間のように。
「―…逃げ出したのは、無意味なんかじゃないわ。」