花嫁と咎人
出会えた奇跡
エステリア城裏墓地。
「…母上。アンネ。」
オーウェンは二つの墓石の前で、静かに腕を組んだ。
『貴方が生きている。それだけで…母は満足です。』
自分の目の前で息絶えた母。
『好きよ…お兄様。』
自分の背中で目を閉じた妹。
次々に甦る最悪な記憶を押し込め…ぎゅっと唇を噛み締める。
「僕は、」
声にならない言葉。
孤独と、痛みが押し寄せて…気がつかない内に嗚咽を上げる喉。
何度泣いても、何度叫んでも、戻る事のない愛に自分は必死にしがみ付いていた。
右を見ても、左を見ても…
全て知る人の墓が並び、
自分のせいで命を奪われた者ばかりだと知れば知るほど、
孤独を感じる。
だが、ここで立ち止まってはいけない。
死んでいった彼らの為にも、いつまでも泣いているわけには行かない。
「終わらせなければ。」
そう。
全てを終わらせる為に戦うのだ。
そしてその刃の向かう先が己の父だとしても…。
「罪は、罪でしかないのだから。」