花嫁と咎人
オーウェンは城内に戻ると、一気に地下まで駆け下りた。
そしてその突き当たりに見えてきたのは大きな裏門。
巨大な鉄の扉には、三つの巨大な閂(かんぬき)で錠が成されており…それを全て引かなければ門は開かない仕組みになっている。
「…これを一人で開けるのか…。」
参ったなと頭を掻きながら、オーウェンはまず一つの閂に手をかけた。
だが。
「―…っく、」
閂はピクリともしない。
長い事使われていなかったせいで錆びてしまったのだろうか。
だがこのままでは…マズい。
父に見つかれば、全てが計画倒れの大惨事になってしまうだろう。
「…駄目だ。」
それだけはに絶対に避けなければ。
オーウェンは眉間にしわを寄せ、再び閂に手をかけては思い切り引く。
それを何度も何度も繰り返す内に、少しずつではあるが、閂はギィ…と音を立てて横にずれ始めた。
「―…っ、」
…しかし残念な事に、これではいくら時間があっても足りない。
それに元々体力の無い彼にとってはかなりの負担だった。
既に手は痙攣し始め、皮もめくれて血が滲んでいる。
マズい。
だが、今更誰かを呼びに行く事も出来ない。
嗚呼、どうする。
オーウェンが真剣に悩み始めたその時だった。
「―…オーウェン様。」