花嫁と咎人
―…それから数十分後。
ガゴン!
最後の閂の落ちる音と共に、裏門は鈍い音を立てて開門された。
ゆっくりと暗い地下に差し込む光。
扉の隙間が広がるにつれ徐々に見えてきたのは…広大で青い海の地平線と、
こちらに近づいてくる4隻の大きな船。
「不思議ですね…。あんな大きな船が、鎖国中のこの国にやってくるだなんて。」
そんな異様な景色を見つめながら、感嘆の声を上げるフレッド。
「まさか自分が生きている内に時代が動くとは…予想外です。」
「…でも、誰かがやらなければいけない事だった。そうだろう。」
同じように船を見つめながら、オーウェンは口を開いた。
「永遠に鎖国を続け、滅びるか。国を開け、新たな世界を生み出すか。…悪を悪として放っておく時代は…もう終わったんだ。」
皮肉げに、されど清清しく。
「親が子を愛すように、国王は国を愛さなければならない。だが…愛を自ら壊し、知ろうとしなかった父に…この国を発展させる事など死んでも出来ない。」
そして海に背を向け、彼は言った。
「…だから、さぁ、滅びに行こう。」
最後に、フレッドに微笑みかけて、
「新たな時代を築く為に。」
終焉へと、歩き出だした。