花嫁と咎人
彼女は一つの牢の前で足を止めると、静かに息を吐いた。
鉄格子越しに見えたのは、茶色いローブに包まるようにして座り込む青年の姿。
ローブのフードからは長い銀髪が零れていて…
彼女はそれを見た途端“彼”だと確信した。
俯いたままのその顔。
寝ているのだろうか。
見えない彼の表情を気にしながら、既に幼い頃よりも随分と成長したであろう体つきを見て、彼女は優しい笑みを零す。
そして、
「―…ハインツ、」
名を呼べば、ピクリと動くその体。
彼の顔が上がり、その青い瞳と視線がぶっかった時…
見開いた瞳と共鳴するかのように…唇が開いた。
「…姉、さん…?」
刹那、鉄格子の内側に手を伸ばしその頬の手を添えて。
詰め込んだ5年間の思いと同時に溢れ出たのは大粒の涙。
「ハインツ、お前を迎えに来たよ。」