花嫁と咎人
午後0時の鐘
ついに。
その日はやってきた。
「………。」
ガヤガヤと人々の会話が飛び交う2番街。
きっとこの人達はハイネの処刑を見に行くのだろう。
面白半分で見る人。
興味本位で見に来る人。
私の想いなんてそっちのけで、彼等は大罪人の死を見に行くのだ。
本当か嘘か、分からなくても。
彼等にとって処刑とは滅多に見れるものではない一大イベントであり、まさに祭りと同じような感覚。
罪を犯したか、犯してないか。
そんな事どうだっていい。
彼等はただ、対象が誰であろうと…その首と胴体が切り離されるまさにその瞬間を見たいだけなのだから。
「蛮行。」
嗚呼、それは愚行だ。暴挙だ。
悲劇だ、人として最大の…罪だ。
不公平な裁きが、この国を蝕んでゆく。
「…止めなきゃ。」
私はそう言うなり、朝日が輝く空を背に窓を閉めた。
そして部屋にあった鏡の前で丁寧に髪を結い上げて…、黄色の薔薇の髪飾りを着けていく。
「よし。」
目の前にある大きな鏡。
全てが終わった後、そこに写る私は…
フリルが沢山付いた薄緑色のドレスを纏っていた。
そう、それはまさにアルベルタさんのもので。
気がついたら自分はその箱に手を伸ばし…勝手に着てしまっていたのだ。