花嫁と咎人
それからタリアの家でジィンと別れ、私は白いローブに身を包みながら裏路地から外へと飛び出した。
瞬間、吹き抜ける風。
閑静な雰囲気はまるでこれから起こる事を否定するかのようで。
表とは違う物静かな空気が、裏通りを駆け巡っていた。
「―…。」
そして私は体を反転させ北の方角を見据える。
高い丘の上。
城壁の向こう。
そこには私が生まれ育ち、18年間暮らしてきたエステリア城が見えて。
複雑な心境を吐き出すように、私は息を吐く。
…私が女王だから。
とジィンに言ったはいいが、内心、本当は不安で不安で仕方が無かった。
何も無い今。
誰が私を女王だと信じてくれるのだろう。
下手な事をすれば状況を悪化させてしまうかもしれない。
嗚呼、嫌だ。
こんなに弱気になってしまう自分が嫌だ。
私はベシッと両手で頬を叩いた。
「…しっかりして。」
私は城へと足を踏み出しながら何度も自分に言い聞かせる。
ローブの裾を握り締め、唇を噛み…何度も頷いては、足を進めた。
もう、迷ってはいけない。
畏れてはいけない。
必ず、全てを取り戻すの。
手に持ったアルベルタさんの“思い出”をぎゅっと握り締め、目を閉じた―…
その時だった。