花嫁と咎人
「侵入者だ、追えー!」
前方から声が聞こえたと思った瞬間、憲兵達がこちらに向かって走ってきたのだ。
…マズイ。
剣を構え、どうしようかと悩んでいた時。
『フランシーヌ、こっちよ。』
誰かが私の手を掴んだ気がして、私は慌てて右の通路へと逃げた。
するとそこには王族の者しか知らされていない秘密の通路への入り口があって。
滑る込むようにそこに身を潜め、息を殺した。
『ど、何処へ行ったー!』
『捜せー!』
暫くして憲兵達が過ぎ去ったのを確認し、安心して立ち上がる―…が。
真っ暗な通路の中。
輪郭を輝かせ私を見つめていた人物がいた。
そう、それは紛れも無く…
「お、父様…お母様…」
死んだはずの両親で。
『…フランシーヌ、お前は良くやった。』
父はそう微笑み、
『さあ、あなたらしくお往きなさい…私達の愛しい娘。』
母は優しげな声で通路の先を示した。
一体これはどう言う事だろう。
サミュエルや、先程の少女。
そして母と父。
死した者達が、私を導いてくれる。
『終止符を打つんだフランシーヌ。私達が成しえなった事を、今、お前が遂げてくれ。』
「…お父様。」