花嫁と咎人
叫び声を上げ、柄を握り締め…ローブが肩から滑り落ちるのも構わずに、
彼女はラザレスに向かって刃を振り下ろす。
「この、小癪なァ!」
叫び、ラザレスが腰から己の剣を抜いた瞬間。
ガキィィン!
交わり、激しくぶつかる互いの刃。
「―…くっ、」
交差する視線は外される事なく、女王は悪を押し…悪は女王を押した。
「殺された父の想い、母の想い…死んでいった者達の想い…。
あなたにその気持ちが分かる!?
彼等には、それぞれの夢があった、希望があった、家族があった!
…たった一つの…、命があった!」
積年の想い。
積年の恨み。
女王は全ての力を振り絞り、彼の剣を押し払う。
「人は、生まれながらにして…平等に与えられたものがあるわ。」
はらりはらりと、言葉に出す度に震え…溢れる涙。
「それは、生きる権利よ!」
涙は止めどなく零れ落ち、冷たい広場の地面に染みを作った。
今まで経験してきた全ての場面が灯馬走のように駆け抜け…溢れんばかりの感情が込み上げる。
「それを、あなたは私利私欲の為に穢した…!尊い命を、あなたは奪ったの!」