花嫁と咎人
だが、ラザレスにとってそんな彼女の想いなど、鬱陶しい以外の何ものでも無かった。
「だから、なんなのだ。」
彼は弾かれた剣の柄を握り返し…冷たく笑う。
「私にその者達への罪を償えとでもいうのか?…ハッ、馬鹿馬鹿しいにも程がある!」
そしてその瞬間。
剣を振り上げ、女王の持っていた剣を弾き飛ばした。
「!」
…カランカランと、特有の金属音を立てながら地面に叩きつけられる剣。
彼女は衝撃の走った右手を握り締めたまま、ラザレスの顔を見る。
「嗚呼、その正義を気取った態度が目障りで仕方が無いのだ。
あの男のような瞳、あの女のような言動。
全てにおいて不愉快で仕方が無い!」
彼は怒鳴った。
「…いつまで私は待てばいい!?…否、既に限界だ!
私はかつてから絶対的な権力が欲しかった。そう、国を統べる力だ!
だが公爵家の私がいくら足掻こうと、その権力は永遠に手に入らない。
故に私のこの喉の渇きが絶える事はないのだ…!」
悪魔のような笑み。
死神のような瞳。
黒い長髪を風に靡かせながら、彼は紅く大きな口を開いた。
「ならば奪えばいい。全滅させて、私がその屍の頂上に君臨すればいい!」
ギラリと光る眼光と、その手に持つ剣の刀身が妖しく揺らいだ時、
「っ、」
女王は後ずさる。