花嫁と咎人
ジジッ。
――…プツン。
「―…だーっ。やっぱりラジオには敵わないってか。」
作成途中の原稿を振り回しながら、男、ウィリー・ジャクソンはラジオの電源を切った。
手元にあるのは今話題の内容とは全く違う内容の記事。
勿論写真もバラバラだ。
「せっかくプロペラ機出しても方向間違えて違う国に行っちゃうし…。なんて運悪いんだろ、おれ。」
すると、そんなウィリーの側から小さなうめき声が聞こえ、彼はぎょっと目を見張る。
その視線の先には大量に山積みされた本の山。
だが、天辺からはあろう事か人間の腕がにょきっと生えていたのだ。
「―…じ、じ…ぬ。」
間も無く聞こえてきたのは誰かの呻き声。
慌ててその腕を引っ張れば、ずるりと出てきたのは編集長アンジェリカ・アンバーシュタインの姿で。
「なにやってんすか!」
そんな彼女に驚きながらも、
「み、水…」
要求された物を素早く取りに戻る忠実な部下、ウィリー。
「はい、水!」
「…う、ナイス。」
暫くしてから話を聞いてみれば、なんでも昔の写真を引っ張り出そうとしたら、棚の上に積んであった大量の本が倒れ、落ちて、その下敷きになり…
早朝からこのまま助けを待っていたそうだ。
「って、あんた、なんで腕が飛び出してるのに今まで気づかなかったわ、け!?」
バコッ!
助けたはずなのに、今日一発目の拳を頂きました。