花嫁と咎人

ジジッ。


――…プツン。



「―…だーっ。やっぱりラジオには敵わないってか。」


作成途中の原稿を振り回しながら、男、ウィリー・ジャクソンはラジオの電源を切った。

手元にあるのは今話題の内容とは全く違う内容の記事。
勿論写真もバラバラだ。


「せっかくプロペラ機出しても方向間違えて違う国に行っちゃうし…。なんて運悪いんだろ、おれ。」


すると、そんなウィリーの側から小さなうめき声が聞こえ、彼はぎょっと目を見張る。

その視線の先には大量に山積みされた本の山。
だが、天辺からはあろう事か人間の腕がにょきっと生えていたのだ。


「―…じ、じ…ぬ。」


間も無く聞こえてきたのは誰かの呻き声。
慌ててその腕を引っ張れば、ずるりと出てきたのは編集長アンジェリカ・アンバーシュタインの姿で。


「なにやってんすか!」


そんな彼女に驚きながらも、


「み、水…」


要求された物を素早く取りに戻る忠実な部下、ウィリー。


「はい、水!」


「…う、ナイス。」


暫くしてから話を聞いてみれば、なんでも昔の写真を引っ張り出そうとしたら、棚の上に積んであった大量の本が倒れ、落ちて、その下敷きになり…
早朝からこのまま助けを待っていたそうだ。


「って、あんた、なんで腕が飛び出してるのに今まで気づかなかったわ、け!?」



バコッ!


助けたはずなのに、今日一発目の拳を頂きました。



< 502 / 530 >

この作品をシェア

pagetop