花嫁と咎人
「―…で、一体なんの写真です?」
「別に、何でもないわよ!」
だが、そう言ってはそっぽを向く彼女の足元に、一枚の写真が落ちていて。
「あ。」
拾い上げて見て見れば、そこには若い頃のアンジェリカと、彼女と良く似た女性が写っていた。
「ば、馬鹿!返しなさいよ!」
気がついた彼女が慌てて取り返しにかかるが、ウィリーはかわしのプロ。
アンジェリカに殴られ、蹴られ、追いかけられている内に、いつしか凄まじい洞察力を手に入れていたのだ!
…と言うのはあくまで理想。
―…ガスッ!
見事に鳩尾を殴られ、悶えながらもウィリーは口を開いた。
「…お姉さんですか?」
そう言えば、アンジェリカは「違うわよ。」としらばっくれながらも嘘はバレバレで。
「最後に会ったのはいつなんです?」
問いかけると、彼女は何か言いたげに口をもごもごと動かしたが、やがて勘忍したのかボソリと呟いた。
「…多分、4年くらい前。エスタンシアに行ったっきり、会ってない。」
そしてまるで昔を思い出しているかのようにその写真を見つめる。
「昔、ね。このアンバーシュタイン新聞社は、姉と姉の夫で経営していたのよ。…まあ、あんたは2年前に入社したから、知らなくて当たり前だけど。」
その姿はどこか新鮮で。
こんな彼女を見るのは、ウィリーにとってはあまりにも珍しい事。