花嫁と咎人


「どうしようもない罪は、少しずつ償っていけばいい。

そして全てが赦された時、もう誰も、君を咎めやしないだろう。

君には幸せを追う権利がある。
進むべき道がある。

今度は君が祝福されなければならない。

罪を背負って生きていく事だけが…人生ではないんだ。」



「………。」



「案ずるな。病の件はもう血清が出来ているし、病は終息を辿っている。
鎖国の事だって…今となってはもう、過ぎた事だ。

だから、そこまで気に病む必要はない。

それに…
君は頭も良いし、よく気が付く。

私は君を頼りにしているんだよ。」



刹那、彼の瞳が潤んだような気がした。
でもそれを零す事無く、オーウェンはぎこちない笑みを作る。

そして書類を抱えたまま胸に手をあて、軽く会釈をすると、


「……勿体ないお言葉です、領主様。」


静かにそう告げ、そそくさと部屋を出て行った。


まだ黒い影を残したその背中を無言で見送りながら、ルエラは「はぁ。」と大きなため息を吐いた後、どっかりと豪華な椅子に座る。


それにしても…ここの領地の管理を任された途端に、
領主様と呼ばれるのはいささか厳つい。


どうにかならないものかと考えながらも、彼女はオーウェンの姿を思い浮かべては、窓の外の景色を眺めた。



「今度、息抜きに何処かへ連れて行ってやるか。」



そんなルエラの気遣いが彼の為になるのかどうかは、





まだ先の話。




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