花嫁と咎人
しかし、それじゃあ納得いかないんだと言わんばかりに彼は私に目を向けると、
急に私の肩を掴み…ニヤリと笑みを浮かべた。
「馬鹿。…俺にとっちゃこんなパレード、退屈で仕方ないんだよ。」
そして、綺麗に整えられた銀髪をクシャリと掻き毟ると、
「さあ、行くぞ。」
私に手を差し伸べる。
「え、え、行くってどこに?」
訳が分からない私は暫く硬直し、その手の平を見つめた。
だが、彼の青い目に囚われて、吸い込まれそうになって、
「…筋書き通りの人生なんて、真っ平だ。」
その言葉を聞いた瞬間、彼の手を取っていたのは私。
そしてニコリと微笑む彼は私に視線を向けると、
「しっかり捕まってろよ、花嫁様。」
「きゃあ!」
突然私を抱きかかえて立ち上がり、走る馬車から一気に飛び降りたのだ。
予想外の出来事にざわめく観衆。
気がついた騎馬兵達は慌てて馬を止め、近衛兵達は唖然と目を丸くする。
「ひ…姫様…!?」
まるで誘拐された者を見るかのように、馬の上からエルバートが叫んだ瞬間、
彼等は人ごみの中に消え、
混乱の中、大歓声が沸き起こった。