花嫁と咎人
「…もっとも、アンタがどういう扱いをされるかはまだわかんねぇけどな…。
俺の予想だと俺がアンタを誘拐したって事になるか、もしくはアンタが女王だという事すら明かさず、脱獄者2名って事になるか……五分五分だな。」
ハイネは顎に手を沿えそういった。
勿論疑問を感じた私は、
「で、でも、前者は酷いわ!ハイネは私を誘拐なんかしていないもの。」
と彼に言うが、ハイネは私を見て吹き出す。
「アンタさ、純粋すぎて困るって言われた事ねぇか?」
「…え?」
そう言えば…あのラザレスにも言われた事があるような…。
するとハイネは急に真剣な表情になって私を見た。
「いいかフラン。真実は真実。嘘は嘘。そう割り切ることは良い事だ。
だけどな…時に真実は嘘に変わり、嘘は真実に変わる。信じることだけが善じゃない。
時には疑うことも必要だ。」
「…疑う、事…?」
「いくら違うといっても、それを真実に出来る奴がこの国にはいる。
俺達が何をしたって敵う相手じゃない。…アンタもそれは十分分かってることだろ。」
そう言ってハイネは暫く口を閉ざした。
そして吹き抜ける風が止んだ時。
「気をつけろ。アンタの長所は時に命取りになる。」
彼は言った。
私の目を見据え、言った。
これはきっと、私に対する忠告。
かつてエルバートが私に言ったように…。
「皮肉なもんだな、人間ってのは。生まれた時は皆同じなのに…いつからか変わっていく。」
そう言うハイネの横顔が、少しだけ別人のように見えた。
海の色と同じダークブルーの瞳。
その瞳は海のもっと向こうを目指しているようだった。