花嫁と咎人
「………。」
何かを飲みに来たのか、冷蔵庫からビンを取り出すと彼女は一気にそれを飲み干す。
そんな姿を俺は見つめ、眉を顰めた。
…タリア・ヴァレンティン。
このアマ、知らぬ顔して…相当な事を知っている。
そう確信したのは、今日この店に来て名前を問われた時だ。
まるで俺の何もかもを知ってるようなその口調。
…気に入らねぇ。
「なぁ、アンタさ、一体何者?」
思わず、声を投げかける。
するとタリアは微笑を浮かべ、こちらを向いた。
「何度も言ってるじゃないか、しがない酒屋の店主だよ。」
「…違う。」
「何にも違わないさ。…だったら聞くけど。」
そして彼女は俺に近づいてきた。
間もなく俺の横に腰掛けて、滑るようにその手をYシャツのボタンに這わせ、
そのまま一つ外し…
「あんたこそ、一体どこのどいつだい?」
突然、襟首を引っつかみ俺を強引に引き寄せた。
…酒の匂い。
俺はそんなタリアの目を見たまま、小さく言う。
「…アンタに言う義理は無い。」
小さな沈黙。
お互いに凝視したまま、時が過ぎる。