花嫁と咎人
そしてギシッと椅子の手すりが軋んだ時、タリアは堰を切ったように笑い出し…口元を歪めた。
「傲慢で」
それから俺の肩を一押し、
「強情で、」
二押し。
「強欲で意地っ張り。」
三押し。
されるがまま、気がつけば俺は押し倒されたような状況になってしまった。
…逆だろ、普通。
そう思いながらも抵抗はしない。
俺を襲うだなんて馬鹿な事…いくらなんでもこの女だってやるわけが無い。
からかってるだけさと言わんばかりに目が笑っているから。
「嫌いじゃないよ、そういう男。」
「…俺はアンタみたいな年配の女なんか、好きじゃないね。」
だが俺の言葉に動じる事無く、タリアは顔を近づけ…耳打ちをした。
「昔あんたと良く似た女の人を、この国で見た事がある。」
刹那、俺は目を見開く。
一気に心臓が高鳴って、急激に口の中が乾き…タリアの目を凝視した。
「…、い、今…なんて言った、」
胸が締まる想いがした。
同時に頭が割れるような頭痛がした。
「そういえば、沢山話もしたねぇ。」
タリアは言う。
「……あの人は確か、こんな名前だった。」