花嫁と咎人
「諦めるな、俺達はこんな所で捕まったりはしない。…そうだろ。」
手を握り、まっすぐ私を見つめるハイネ。
思わず私は、その視線から目を逸らせなくなる。
そしてその後、駆け寄ってきたタリアが私を抱きしめ…優しい声で言った。
「…負けるんじゃないよ。何があっても。自分を信じて…進むんだ。」
自然と涙が溢れてきて。
「でも…!貴女を置いてはいけないわ…!」
「…全く何言ってんだい…。あたしゃこんな所でくたばる様な女じゃないよ。…さぁここは私に任せて…、早くお行き。」
そんな私の髪を撫でてタリアは笑った。
「…タリア、」
「二階の奥の部屋に、地下に繋がる通路がある。道はハイネに教えておいたから、心配いらないよ。」
「……ああ、タリア…!」
ハイネが頷き私の手を引くと…彼女は私から離れ、一階へと姿を消す。
「っタリア!私、私、また来るわ、貴女に会いに!その時はまた…、また…っ…お世話になっても…いいかしら…!」
私は彼女の背中に向かって声をかけた。
溢れる涙、遠ざかるその姿。
どうか、どうか…届いて…!
そして。
「ああ、待ってるよ。」
彼女はそう言った。
ハイネに連れられ…二階の奥にあった部屋の扉が閉まる直前。
小さな隙間から滑り込むように…。
タリアの声は私に届いた。
彼女の姿をこれでもかという程、目に焼きつけて。
刹那、扉は無情にも閉ざされ、光は、そこで断ち切られた。