花嫁と咎人
◇ ◆ ◇
ドアを叩く音。
強く激しく、
鳴り止まないそのイカれた音にうんざりしながら、タリアは店の扉を開いた。
…鬱陶しい連中だねぇ。
勿論、開いた扉の先には通路を埋め尽くさんと立ちはばかる、王国騎士団達の姿。
銀の甲冑に、堂々と刻まれた文様。
偽りの正義に偽りの報道。
自らフランを亡き者にしようとしたくせに…今度は女王を捜すだって?
一体どんな風の吹き回しだろうね、この腐れ騎士団。
腕を組みやれやれと溜め息を吐いた、その時。
銀甲冑の群れの中から現れたのは、たった一人だけ黒服を纏った男。
黒い髪に金色の瞳。
その男は私を見るなりこういった。
「タリア・ヴァレンティン。」
そして、一つのこげたコルク栓を突き出して。
「これは貴女の店の物か?」
刹那、タリアは笑う。
「コルク栓?それがどうしたんだい?…アタシゃそんなコルク栓知らないねぇ。何処か違う店のモンじゃないのかい。」
…嗚呼、馬鹿馬鹿しい。
一体どっからそんなコルク栓を持ち出してきたのか知らないけれど。
「…貴女が女王陛下を連れた死刑囚を匿っていないか…調べさせて貰う。」
店の中に押し入る男、それに続く王国騎士団。
「…あんた等の好き勝手には…させてやんないよ。」
タリアは壁にもたれ掛かり、一人悪態を吐いた。