花嫁と咎人
◇ ◆ ◇
4番街。
広い草原の中に流れる綺麗な小川。
その側にある赤い屋根の小さな民家の中で、いつも通り朝食の準備をしていた赤髪の少女。
するとそんな時、小川に水を汲みに行っていた弟が…息を切らして帰って来た。
「姉ちゃん…!大変だ…!」
所々継ぎ接ぎされた服を更に汚し、激しい訛りの言葉を炸裂させながら、弟は姉に訴えかける。
「…ん?どうしただ?」
弟は返事をする間も無く、姉の手を引き…小川へと。
おいおいと来てみれば、水車の横に何かが引っかかっていた。
「何かあるだよ。」
体を傾けて見てみるとそこにはこじんまりとした木製の船が浮かんでいて。
…それを覗き込んだ瞬間、姉は物凄い形相をして「ぎゃー!」と叫んだ。
「こ、これは、大変な事になったべ…!」
◇ ◆ ◇
「……タリア…。」
私は地下通路の壁にもたれて座り込んだまま…顔を腕の中に埋めた。
小さなランプが、真っ暗な地下通路に細々と明かりを灯している。
ハイネはというと、砂が入った袋を地下通路へと繋がる扉へ向かって積んでいた。
どうやら扉の先が空洞である事を悟られないようにする為らしい。
でも、
こんなの所詮その場凌ぎにしかなんねぇ。
と、彼は表情を変えることなく言った。
私達があの後入った場所は押入れだった。
そしてその押入れの床の一部が、この地下通路へと繋がる入り口だったのだけど…。
これからの事を考えるよりも、私の心は今尚タリアの安否の事で一杯だった。
…もしかしたら捕まってしまったかもしれない。
最悪…殺されてしまうのかも…。
そう思うと、自分を責めずにはいられなかった。