花嫁と咎人
…私がいなければ。
エルバートやサミュエルを失わずに済んだかもしれない。
タリアを危険にさらす事も、ハイネを巻き込んでしまう事も…無かったのかも。
結局王国はハイネが私をさらったという報道をした。
その結果ハイネを…悪者にしてしまった。
多額の賞金までかけられて…。
すると丁度袋を積み終わったハイネが、息を吐きながら戻ってくる。
「休んでる暇はねぇからな。…とっとと行くぞ。」
まだ気持ちの切り替えが出来ていない私だったが、半ば強引に連れられるように、その場から一秒でも早く離れるべく私達は再び歩き出した。
どうやらハイネはタリアから地図を貰っていたらしい。
大きなその地図を広げ、位置を確認しては…指でなぞる。
「…とりあえずここをまっすぐ行けば、2番街の最端まで行けるみたいだな。あとは地上を歩いていくしかない。」
賊にも気をつけないとな。
と彼は付け足けたした。
何でも城から扇状に離れた街へ行くにつれ、治安は悪くなり…そういった人達が沢山いるようで。
勿論賞金をかけられている私達は絶好の獲物。
捕まれば最後だ。
「それに、この国…妙な病が流行ってるらしいな。“緋色の死神”とやら何とかっていう…。」
ハイネは前複雑そうな表情を浮かべ、顎に手を添える。
…緋色の死神。
原因不明の病。
「……ええ。」
鎖国状態のこの国には、治療法が無い。
「ったく、これじゃ…まるで死の牢獄だ。」
そう、皮肉げに呟く彼の言葉に偽りはない。
…実はこのエスタンシア王国。
この国自体、独立した一つの大陸なのだ。
一度この国に入れば出る事はできない。
それと同じで…国から発生した病も、この国の中で充満して行く。