花嫁と咎人
「とりあえず感染するなよ。…アンタに死なれちゃ後味悪るいからな。」
頭をかきながら振り向くハイネ。
そして彼はポケットに手を突っ込むなり、何かに気づいたように声を上げると、掴んだそれを取り出し私に投げた。
「わっ、」
受け取ったもの。
それはサミュエルの日記。
「それ、返しそびれてた。」
城門を通った時以来、ハイネがずっと持っていたのだろう。
「大切なモンなんだろ。しっかりしまっとけ。」
汚れ、所々破れた表紙を見れば誰もが無価値だと指をさし言うだろう。
でも私にとってこの手帳は、計り知れない程の価値を有している。
「そうね、ありがとう。」
ハイネに礼を言い、鞄に日記を入れようとした時、手帳の角が鞄に引っかかり、中身が全部出てしまった。
何やってんだよと言わんばかりに溜め息を吐くハイネ。
ああ、私ったら…。
拾おうと慌てて膝を折る。
ため息をつきながらも同じように腰を下ろし手助けをしてくれるハイネ。
すると彼はとある物を手にし、徐にそれをランプに近づけた。
キラリと青く光る物。
「…これは?」
それはサミュエルに貰ったブルーサファイアのペンダント。
「サミュエルから貰ったものよ。」
すると私の返事に彼は「貰った?」と不審そうに眉をひそめる。
「本当よ、とっても大切なものなの。…返して。」
だが、私がそう言っても彼は中々返してくれない。
それどころかより一層まじまじと見て。
挙句の果てには、
「成程…だからか。」
と一人で納得してしまう始末。