花嫁と咎人
必然的に私の視線は、彼の手にあるペンダントに向けられた。
ラザレスが欲しがっていたもの。
私には託されなかったもの。
でもこれが、私の身分を証明するもの―…。
「そう、これが“王族の証”」
ハイネがそう告げたとき、ペンダントの青さが目に染みた。
「フラン、アンタが女王である事を示すものだ。」
嗚呼、“サミュエルは知っていた”のだ。
ラザレスがこれを狙っている事を。
だから私から遠ざけ、存在すら明かさず…今まで隠してきた。
王族の証が悪の手に渡り、直系である私が死んでしまえば…その者を王とする他無い。
「いいか。アンタがこれの在り処を知っている限り、恐らく殺される事はない。…でも」
ハイネは少しだけ悲しそうな顔をする。
まるで別人のような表情で、私の手をそっと取りペンダントを握らせた。
「見つかったら、終わりだ。」
青い目が私を見たとき、何故か心が疼いた。
彼のまた違う一面を見た気がした。
そんな私を気にも留めず、背を向け、早足に先へと進むハイネ。
託されたペンダントを握り締め、彼に続く私。
腰に携えたエルバートの剣が、少しだけ重く感じた。