花嫁と咎人
死神は刻々と
地下通路を歩き続ける事半日。
まさかこんなにも通路が長く、時間がかかるとは思ってもいなかった。
私達は突き当たりにあった埃まみれの小さなドアを見つけ、地上へと繋がる階段を上がる。
そして木製の扉を開けた時、私は眩しさに目を細めた。
―なんと、そこは教会だった。
使われているのかいないのか、定かではないが…
置かれた白い羽の女神像は汚れ、並べてある椅子も所々腐食が進んでいた。
それなのに綺麗なステンドガラスが妙に違和感を感じさせる。
「この国にも女神信仰があるなんてな…。恐らくここは再生派だな。」
女神像に視線を向け、ハイネは呟く。
女神信仰。
それは全世界に信仰されていると言われる宗教の事だ。
信仰には破壊派と再生派があり、その派閥によって女神像も異なれば、内装も外見も違う。
白い羽の女神像と、美しい装飾が施されているのが再生派。
黒い羽の女神像と、シンプルな内装であるのが破壊派。
どちらかと言えばこの教会はまだ装飾されている方だった為、恐らく再生派なのだろう。
この国は殆どが再生派で、破壊派はごく僅かだと聞いた事がある。
……私は何にも属していないから詳しくは分からないけれど、この女神信仰は古い言い伝えが元になっているとか。
「…何が違うのかしら。」
「さぁな。俺も基本無所属だからよくわかんねぇけど、家柄的に若干破壊派寄りだってのは知ってる。」
そんな事を言いながら、私達は外へ。
そして外に出るなり、私達はこの国の本来の姿を見る事となる。
「―…。」
辺りを見渡し、片手で口を押さえるハイネ。
思わず私も両手で口を押さえる。
辺りに立ち込める白い霧、きつい腐敗臭。
地面に転がるのは、もがき苦しみ最後を迎えたであろう無残な人達の無数の遺体が。