花嫁と咎人

  ◇ ◆ ◇

朝、目覚めると…そこにハイネの姿は無かった。
暫く横になったまま焚き火の残り灰を見つめるけれど、ハイネの事が気になってゆっくりと体を起こす。

…あ、痛みが消えてるわ。

気がつけば、胃の痛みは治まっていて。
だいぶ寝たからかしらと辻褄を合わせてみる。

するとその時、向こうから誰かが歩いてくる音がして…私は振り返った。


「…起きたか。」


足音の正体はハイネ。

彼はなにやら手に赤い物を抱えて、こちらに向かってくる。


「どこに行っていたの?」


私が問いかけると、


「森の奥まで。…でかい河があった。多分オーダ河ってやつじゃねぇか」


彼は私にその赤色の球体を渡してそう言った。

オーダ河。
確か2番街と3番街の境界線にあたる場所だ。
…という事は、ここは2番街の本当に端なのね。

ハイネは私の隣に座り込み、おもむろにその赤色の球体に噛り付く。
中は薄桃色をしていて…どんな味がするのかしら…。

豪快にそれに噛り付くハイネをじっと見ていると、彼は私を見て「要らないのか?」と口を尖らせた。
だけど私は赤色の球体を見つめたまま首を傾げてしまう。


「これは一体なんていう食べ物なの?初めて見たわ…」


するとさも驚いたように、ハイネは目を丸くした。


「ロッダの実だよ。…知らねぇのか。」


「ロ、ロッダの実…?」



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