花嫁と咎人
「ロッダの木に成る実の事。…世界中に生えてて誰でも知ってんぞ。」
流石姫様。と言わんばかりに、流し目でそのロッダの実をかじるハイネ。
彼のそんな態度を見ていたら無性に悔しくなって、私も思い切り実に噛り付いた。
すると、なんという事だろう。
ロッダの実はとても甘かった。
みずみずしくて、まるで桃のよう。
「…美味しい!とっても美味しいわハイネ!…これを見つけた人はきっととても凄い人なのね!世紀の偉人よ、素晴らしいわ!」
一口かじっては二口。
大袈裟に感嘆の声を上げる私を見て、ハイネは急に笑い出した。
「ホント、アンタって面白いヤツ。そんなに美味いかよ、」
…とても綺麗な笑顔だった。
屈託の無い、純粋な笑顔。
「昨日はどうなるかと思ったけど、その分じゃ心配いらねぇみたいだな。」
そんな彼を見るととても幸せな気持ちになるの。
「そうね、昨夜は迷惑をかけてしまったわ…。ごめんなさい。…でも、感謝してるわ。」
ロッダの実に噛り付きながら、私は微笑んだ。
「…別に、気にしてねぇよ。酷くならなくて良かった。」
ハイネはそう言って、私の頭をポンと優しく叩く。
刹那…無意識に、息を呑んでしまった。
少しだけ早くなる鼓動。
ほんのり熱くなる頬。
…どうしてしまったの?
熱でもあるのかしら。
綻んでしまう顔を必死に隠そうとしながら、私はロッダの実を一口かじった。