花嫁と咎人
ギシギシと音を立てる木の板や揺れる橋が、私の恐怖心をより一層掻き立てて。
足が言う事を聞かない。
でも、
「前を見てろ!」
ハイネの声が何度も弱虫な私を導いてくれたお陰で…
何とか無事に向こう岸まで辿り着き、そこで待ってくれていた彼に思わず抱きつく。
その時全身が震えて声も出なかったけれど、
「…頑張ったな。」
ハイネの存在が私を安心させてくれた。
それからハイネはサーベルで橋のロープを切った。
…これで王国騎士団が来ても、ここを渡る事はもう出来ない。
勿論、私たちが引き返す事も出来なくなった。
「よし、行くぞ。」
「ええ。」
それからハイネに促され、休む間も無く3番街へ。
しかしさっきまでの森が嘘のように…そこはなんとも閑散とした場所だった。
砂埃が舞い、空き缶やごみくずが一緒になって飛んでくる。
砂が目に入って、何度も立ち止まったりを繰り返し、それでもなんとか歩いて辿り着いた場所。
「……。」
そこは“テラスパーレ”という小さな町だった。