花嫁と咎人
突然全身に衝撃が走り、気がついた時にはもう、体ごと壁に押し当てられている状態で。
「…痛っ、」
小さく息が漏れ、背中に痛みが走る。
反射的に手を動かそうとするけれど、私の華奢な両手は頭上で押さえつけられていて、身動きが全く取れない。
「な、何…」
混乱する頭の中で目を開けると…そこには先程の男の顔があって。
彼は冷たい眼差しをこちらに向けながら、小さく口を開く。
「…ごめんね、オレ。君を騙しちゃった。」
微笑を浮かべたその口、この状況。
それらをようやく把握した時…私は多くを悟った。
彼はそんな私の恐怖などお構いなしに、じっとりと舐めるように私の顔を見つめ、言う。
「君、何レクス持ってんの?」
「…レ、クス…?」
「そ、お金。」
そして彼は何を思ったのか…片手を這わせるように私の肩からそっと胸の方まで手を下ろすと、耳元で囁いた。
「それに君さぁ、男じゃ無いみたいだし?」
私は思わず目を見開いて、
「…っ、やめて、」
声を振り絞って言う。
生理的に涙が溢れて、もう何も考えられなくなっていた。
私はとんでもない大馬鹿者だわ、と後悔するばかりで。
小さな嗚咽が虚しく裏路地に響く。