好きだからこそ


「阿南…なんていうの?」

私は複雑な漢字に目を取られた。

「チトセよ。チトセ!」

留衣乃が活発な口調でいう。

「あー…あれでチトセか」

「アンタ、大丈夫?」

私のあまりの頭の悪さに嫌気がさしたのか、留衣乃はいった。

「間に合ってます」

わざと平気に答えた。

まだ“阿南 千斗世”という人物を理解してはいなかった。


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