モノクロ ―黒の中の白、白の中の黒―
私は、その話題で友達と盛り上がりながら、こっそり彼に憧れる一人でしかなかった。


あんなふうに自由に生きれたら、どんなに楽しいんだろう。


あんなふうに人に好かれる人になれたら、どんなに幸せなんだろう。


そんなふうに考えながら、彼を観察するのが好きだった。


ただ、私からしたら彼は眩しすぎたから。


たった1度だけ言葉を交わした時には、彼の無邪気な笑顔に思わず目を細めてしまった。


遠巻きに眺めるのがちょうどいい距離なんだと、その時に学んだ。


だから、それからはこっそり眺めることに撤しようと決めた。


けれど、そんな2年の秋。


その事故は起きてしまった。


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