モノクロ ―黒の中の白、白の中の黒―
歩いている間、彼は何も話さなかった。


いつも私の部屋でするような一方的なマシンガントークも、ご機嫌とりの会話も、一切しようとはしなかった。


だから、私はそのまま俯き気味に彼の一歩後ろを歩く。


前を歩く彼は、何歩か前へ進む度にちらりと後ろを振り向きまた前を向く、を繰り返していた。


その足取りは、端から見ても違和感を感じるようなぎこちないものだ。


何だか付き合いたての中学生カップルみたい。


ふとそんなことを考えると、ふっと息がもれる。


口元に手をあてると、口元が緩んでいてはっとした。


あぁ、やっぱり今日は変だ。


しっかりしなくてはと自分に言い聞かせ、慌てて口元を引き締め、邪念を払うように頭を横に振った。


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