DeepLove−彼の弟−
振り返ると直斗ママがいた。
「ありがとう、来てくれたのね」
なんだか疲れているように見えた。
「さっき七瀬ちゃんのお母さんにも会ったわよ」
…ママも来てたんだ。
そういえば朝、喪服をクローゼットから出してたっけ。
「七瀬ちゃん、こんな人混みにいるの疲れるでしょ?葬儀が始まるまでこっちの部屋にいれば?」
「…え?いいの?」
「いいの、いいの。今、部屋には親戚しかいないけど…七瀬ちゃんは、もう家族のようなものなんだし」
……“家族”…
大好きな人の家族として認めてもらえて嬉しいはずなのに…
家族になる夢が終わった今は、その言葉は虚しく感じる。